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<Author: 杜甫>
<Title: 哀江頭>
<Format: 樂府詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 江頭に哀しむ>
<BookPage: 337>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
少陵野老吞聲哭，
春日潛行曲江曲。
江頭宮殿鎖千門，
細柳新蒲爲誰綠。
憶昔霓旌下南苑，
苑中萬物生顏色。
昭陽殿裏第一人，
同輦隨君侍君側。
輦前才人帶弓箭，
白馬嚼齧黃金勒。
翻身向天仰射雲，
一箭正墜雙飛翼。
明眸皓齒今何在，
血污遊魂歸不得。
清渭東流劒閣深，
去住彼此無消息。
人生有情淚霑臆，
江水江花豈終極。
黃昏胡騎塵滿城，
欲往城南忘南北。
<End Poem>
<Translation>
少陵のいなかおやじであるわたしは、声をしのんで泣きながら、この春の日に
世が世ならば景勝行楽の地としてにぎわうはずの曲江のほとりを、人目につかぬようにさまよい歩く。

曲江のほとりの宮殿は、たくさんの門をとざしたままで人の気配もない今
ほそい枝の柳と、がまの新芽は、いったいだれのために美し緑に萌え出ているのか。

思い出す。その昔、天子の虹色の旗がこの曲江の南にある南苑にお出ましになった時には、御苑の中のすべてのものが、客びのために生き生きとかがやいて見えたことを。

そのとき昭陽殿の中の、君寵第一の人である楊貴妃は、天子のお車に同乗して、天子のお供をし、おそばにつき従っていた。お車の前には、女官たちが弓矢を身につけ、まっ白な馬は、黄金づくりのくつわをかんでいた。

女官たちが身をおどらせ、天に向かってふり仰いで、雲に矢を放てば、その一矢でねらいたがわず、雌雄一対の鳥が射落とされたものだった。

美しく澄んだひとみと、白い歯の美人楊貴妃は、いま、いったいどこにいるのか。血でけがされた人の、さまよう魂は、帰り落ち着くことができないでいる。

清らかな渭水は東に向かって流れ、剣閣の山々はあくまでも深く、剣閣のかなたの蜀に去った彼玄宗も死んで渭水のほとりにとどまったこの人楊貴妃も、ともに音信は絶えてしまった。

人と生まれたものには感情のはたらきがあるものだから、なみだがわたしの胸をぬらしてやまない。曲江の水の流れと、そのほとりに咲く花とは、どうして最後には絶え尽きてしまうことがあろうか。自然の悠久さにくらべて、人の世ははかないものだ。

夕暮れどき、異人の騎兵のたてるほこりが、長安のまちに満ちる中で、このわたしはまちの南の方に行こうとして、町の北の方へ向かって歩き出す始末である。
<End Translation>